「お前を殺すなぞということが、どうして私に出来よう。」と言いました。
「でもそれが私の仕合《しあわ》せになるのです。けっして悪いことにはなりません。どうか私のいうとおりにして下さい。」と、馬はくりかえしてたのみました。ウイリイは仕方なしに、剣をぬいて、馬の首を切り落しました。そしてその首をしっぽ[#「しっぽ」に傍点]のそばにおいて、三べんお祈りをしますと、今まで馬の死骸だと思ったのが、ふいに気高《けだか》い若い王子になりました。それは王女のお兄《あにい》さまでした。王子は今まで魔法にかかって、永《なが》い間《あいだ》馬になっていたのでした。
 二人は大よろこびをして、たがいに手を取って御殿へはいりました。王女のよろこびも、たとえようがないほどでした。
 めでたい、御婚礼のお祝いは、にぎやかに二週間つづきました。ウイリイ王と、王妃とは、お兄さまの王子と三人で、いついつまでも楽しくくらしました。



底本:「鈴木三重吉童話集」岩波文庫、岩波書店
   1996(平成8)年11月18日第1刷発行
底本の親本:「鈴木三重吉童話全集 第一巻」文泉堂書店
   1975(昭和50)年
初出:「世界童話集 第一編『黄金鳥』」春陽堂
   1917(大正6)年4月
入力:土屋隆
校正:noriko saito
2006年4月29日作成
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