ないものですから、馬のいうことを聞かないで、とうとう飛び下りてひろいました。すると、その一本だけでなく、ついでに前のもみんなひろっていきたくなりました。ウイリイはわざわざ後《あと》もどりをして、三本ともすっかりひろいました。
その羽根はほんとうに不思議な羽根でした。一本々々見ると、みんな同じように金色に光っているのですが、三本一しょにならべると、女の顔を画《か》いた一まいの画《え》になるのでした。それこそ、この世界|中《じゅう》で一ばん美しい女ではないかと思われるような、何ともいえない、きれいな女の画姿《えすがた》です。ウイリイはびっくりして、その顔を見つめました。
ウイリイはやっと、その羽根をポケットにしまって、また馬を走らせました。そしてどこまでもどんどんかけていきますと、しまいに或《ある》大きなお城の前へ来ました。馬は、
「これが王さまのお城です。ここへはいって家来《けらい》にしておもらいなさい。」と言いました。ウイリイは、すぐに、王さまのうまや[#「うまや」に傍点]の頭《かしら》のところへいって、
「どうか私を使って下さいませんか。」とたのみました。
「ただ私の馬のかいば[#「かいば」に傍点]さえいただきませば、給料なぞは下《くだ》さらなくともたくさんです。」と言いました。そして馬丁《ばてい》にやとってもらいました。
ウイリイはうまや頭《がしら》からおそわって、ていねいに王さまのお馬の世話をしました。じぶんの馬も大事にしました。そして、しばらくの間なにごともなく、暮していました。
ウイリイは厩《うまや》のそばに、部屋をもらっていました。夕方仕事がすみますと、ウイリイはその部屋へかえって、いつも窓をぴっしりしめて、例の三本の羽根をとり出しました。羽根は、お日さまのように、きらきら光るので、部屋の中が昼のように明るくなりました。
ウイリイは、その部屋の中の美しい女の人の顔を、毎晩紙へ画《か》き取りました。しかしなかなか思うように上手《じょうず》にかけなくて、たんびにいく枚も/\かき直しました。
一たい厩の建物では、夜もけっして灯《あかり》をつけないように、きびしくさし止めてありました。それで、ウイリイはいつでも窓をかたくしめておくのでしたが、それでもしまいには、だれかが、そこに灯がついているのを見つけて、厩頭《うまやがしら》の役人に言いつけました。
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