その反対に、少しでも自分を押えつけることが出来ないで、いろいろの悪いことをしたものは、次の世には、獣や、またはそれ以下の動物に生れて来るのだと信じておりました。
それらの学徒は、お互に、いつも固く団結して、いろいろの学問を修めていました。特に数学と音楽とを一ばん大切なものとして研究しました。
その学徒の一人のピシアスという人が、シラキュースに来ておりましたが、それがいつもディオニシアスに反抗しているように睨《にら》まれて捕縛されました。ディオニシアスはいきなり死刑を言いわたしました。
ピシアスは、それでは仰《おおせ》のままに殺しておもらいしましょうと言いました。しかし、そのまえに一つお願があります、私は希臘《ギリシヤ》に土地を持っており、身うちのものもおります。それで、一度あちらへかえって、すべてのことを片づけておき、すぐにまた出て来て処刑を受けますから、どうぞしばらくの間お許しを得たいと言いました。
ディオニシアスはそれを聞いて嘲笑《あざわら》いました。そんなにして、まんまと遠い海の向うへ遁《に》げた後に、またわざわざ殺されにかえる馬鹿があるものか、そんなふざけた手でこのおれ
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