れて、ぶたれました。あかんぼのかごを、ゆすぶりながら、ゐねむりをしたからです。このまへも、おかみさんが、ニシンをあらへといつたから、しつぽのはうからあらつたら、いきなり顔を、ニシンでつきました。なぜ、ニシンをしつぽからあらつてはいけないのか、わたくしにはわかりません。
 職人は、よくわたしに、キウリをぬすんでこいつて、いひつけます。こなひだも、それを親方にめつかつて、うんとぶたれました。ぶたれるのはがまんできるが、ぶたれたあとは、きまつて、ばつに、なんにもたべさしてくれません。
 まい日たべるものは、朝はパンだけで、おひるはゴッタ煮で、晩はパンだけです。お茶やスープは、親方とおかみさんが、みんなのんでしまつて、わたしにはくれません。
 夜はお店でねます。でも、あかんぼと一しよにねかされるのだから、あかんぼがなくとねむれません。なきやむまでゆすぶつてゐなければ、ぶたれます。
 マカリッチのだんなさま、おねがひだから、わたしをまた村へつれてつてください。ほんとにおねがひです。」
 ユウコフは、口をゆがめながら、きたない袖口で目をこすり/\、泣きはじめました。
「だんなさま、わたしは、まい日
前へ 次へ
全9ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング