れて、ぶたれました。あかんぼのかごを、ゆすぶりながら、ゐねむりをしたからです。このまへも、おかみさんが、ニシンをあらへといつたから、しつぽのはうからあらつたら、いきなり顔を、ニシンでつきました。なぜ、ニシンをしつぽからあらつてはいけないのか、わたくしにはわかりません。
職人は、よくわたしに、キウリをぬすんでこいつて、いひつけます。こなひだも、それを親方にめつかつて、うんとぶたれました。ぶたれるのはがまんできるが、ぶたれたあとは、きまつて、ばつに、なんにもたべさしてくれません。
まい日たべるものは、朝はパンだけで、おひるはゴッタ煮で、晩はパンだけです。お茶やスープは、親方とおかみさんが、みんなのんでしまつて、わたしにはくれません。
夜はお店でねます。でも、あかんぼと一しよにねかされるのだから、あかんぼがなくとねむれません。なきやむまでゆすぶつてゐなければ、ぶたれます。
マカリッチのだんなさま、おねがひだから、わたしをまた村へつれてつてください。ほんとにおねがひです。」
ユウコフは、口をゆがめながら、きたない袖口で目をこすり/\、泣きはじめました。
「だんなさま、わたしは、まい日
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