まだ小さく、下の子なぞはお乳をはなれないくらゐです。おかみさんは、その二人の子どもをつれて、イワンが入れられてゐる牢屋《らうや》へたづねていきました。はじめはどうしても面会を許されませんでしたが、さんざんにねだりたのんで、やうやく聞きとゞけてもらひ、役人につれられて、イワンのそばへいきました。
いつて見ると、イワンは囚人の服をきせられ、くさりでしばられて、盗人たちや、いろんな罪人たちと一しよに投げこまれてゐます。おかみさんは、イワンのそのありさまを見ると、その場へたふれて、目をまはしてしまひました。おかみさんは、人々にかいほうされて、やうやく正気にかへりました。そして、泣き/\子どもを引きよせて、一しよにイワンのそばへすわりました。そして家《うち》のことや、店のことなどを話したのち、イワンが町を出てからのことをくはしく聞きたゞしました。
「おや、まあ、さういふわけなのですか。……一たいどうしたらあなたのあかりが立つのでせう。」とおかみさんは涙をふき/\言ひました。
「かうなれば、最後に皇帝へ書面を出して、罪のないものに罰を加へて下さらないやうにおねがひするまでだ。」とイワンが答へまし
前へ
次へ
全22ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング