ました。
イワンは、いら/\するほどかなしく苦しくて、いつそのこと、もう、ひと思ひに自殺してしまはうかとまで思ひつめました。
「あゝ、これもみんなあの悪いやつのおかげだ。」とイワンは心の中で言ひました。イワンはさう思ふと、もえ上るやうに腹立たしくなつて来ました。
「あいつを殺してやらうか。さかさに、こつちが殺されたつてかまはない、どうかして、ふくしうしてやらなければ虫がをさまらない。」
イワンは、かう思ひつゞけた後、とう/\夜があけるまで祈りつゞけにお祈りを上げました。しかしそれでも胸一ぱいのくやしみは取れませんでした。
昼の間は、イワンはわざとマカールのそばへは近づかず、マカールの方を見ることさへしませんでした。
こんなにして二週間といふものが過ぎました。イワンはその間、夜もちつとも眠れないし、のちには身のおき方もないくらゐにもだえなやみました。
或《ある》晩、イワンは牢屋《らうや》の中をぐる/\歩いてゐました。囚人たちは、みんな、壁ぎはにつけてある棚《たな》の上に一人づゝ寝るのですが、ふと見ると、さういふ或一つのたなの下から、土のかたまりがころころところがり出ました。へん
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