ました。
「そんなことならいゝんですけれど、私《わたし》はそれはへんな夢を見たんです。あなたがニズニイからかへつていらしつて、帽子をおぬぎになると、おつむりの髪がすつかり白髪になつてる夢を見たんです。」
「はゝゝそれはけつこうな前兆だよ。まあ/\見てお出《い》で。品物をすつかり売り上げて、土産を買つて来るから。」
イワンはかう言ひ/\馬車を走らせて出ていきました。そしてニズニイまでの道のりの半分まで来ますと、リアザンの町から来た、或|知合《しりあひ》の商人に出あひました。その晩二人は、或村の宿屋について、一しよにお茶を飲んだりしたのち、となり合つた部屋にはいつてやすみました。
イワンはいつも夜は早く寝るのが習慣でした。それであくる朝も、涼しい間に歩かうと思つて、まだ夜のあけないうちに馬車つかひをおこして、馬を引き出させました。宿屋の亭主《ていしゆ》たちは裏手の小さな建物に寝てゐました。イワンはその亭主をおこしてお金をはらつて立ちました。
そこから二十五マイルばかり来ますと、イワンは道ばたの宿屋へ馬車をとめて、馬にかひばをつけさせました。イワンはお茶の用意をたのんで、それが出来るま
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