ざんげ
鈴木三重吉

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)住居《すまひ》と、

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)或|知合《しりあひ》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)そり[#「そり」に傍点]に

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)言ひ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

    一

 ロシアのウラディミイルといふ町に、イワン・アシオノフといふ商人がゐました。住居《すまひ》と、店を二つももつてゐるほどのはたらき人で、謡《うた》をうたふことの大好きな、おどけ上手の、正直ものでした。
 そのイワンが或《ある》夏、ニズニイといふ町の市へ品物をさばきに出かけました。イワンが馬車をやとつて荷物をつみ入れさせ、子どもたちや、おかみさんに、いつてくるよとあいさつをしますと、おかみさんは心配さうな顔をして、
「今日立つのはおよしになつたらどうでせう。私《わたし》はいやな夢を見たんですが。」と言ひました。
「ふゝん、もうけた金を使つてでも来るかと気になるのかな。」とイワンは笑ひ
次へ
全22ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング