す。そして、目をつぶつてのみこんでしまつたのです。
「まあ、とんでもない。……ばかなことを。……どうしてそんなむちやをするのです。ほんとにあきれた。なんておそろしいことをするのです。」
ミスはひつくりかへるほどびつくりして、お部屋へかへつても、フランス語とイギリス語を、ごつちやに、くちびるの上でぶつけ合せました。トゥロットは平気で、にはか雨が来たのを、けろんとして見てゐました。
しかし、じつをいふと、胃ぶくろの中がどうなるか、それがすこし気がゝりでした。いやにグウグウと、へんな音がします。きつとかたつむりが、のそ/\歩いてゐるのにちがひありません。かうおもふとすこし胸がむかついて来ました。
でも、まあそれだけのことです。かたつむりはどうせ消化されてしまふでせう。
そこでトゥロットは、雨があがると、またお庭へ出ました。そして、まへよりももつとふかい愛情をもつてバラを見入りました。あはれなかたつむりを、むごたらしくふみつぶしもせず、そしてこのうつくしいバラをも、すつかり保護してやつたことが、トゥロットにはとても/\とくいでした。
底本:「日本児童文学大系 第一〇巻」ほるぷ出版
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