つこめたりしてゐます。ちつとも、ゑんりよなんかしてゐやしません。トゥロットは、しばらく、じつと見つめたのちに、するどい声をたてゝミスをよびました。
「ミス、来てごらんなさい。」
ミスは大きな鼻を上げ、ご本をかゝへて、四またぎでトゥロットのそばへ来ました。
「何です。」
トゥロットは、おゝこはい/\といふやうに、ゆびさしました。
「かたつむりぢやありませんか。」
それはわかつてゐます。トゥロットが見たつてかたつむりです。
「この軟体動物は植物に害を加へます。殺してもかまひません。」
トゥロットは、けつこうなおゆるしをいたゞきました。しかし、こいつをつかまへるのはたまりません。とてもいやなことです。
「とつて下さいな、ミス。」
ミスは、たちまち、けはしい目つきをしました。
「なぜわたしがそれをつかまへるのです。なぜあなたがつかまへないのです。それがバラを害する以上は、あなたがつかまへるつかまへないは、あなたの幸福にえいきようするのですよ。あなたの幸福を保護するのは、あなたでなければならないはずです。」
トゥロットはためいきをつきました。ミスが一ど言ひ出したら、いくら口ごたへをし
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