つたのに――。だが、やつぱり、おれにはまだ/″\、若い色好みの心が、失せないで居るぞ。何だか、自分で自分をなだめる樣な、反省らしいものが出て來た。
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其にしても、靜か過ぎるではないか。
さやうで。で御座りますが、郎女のお行くへも知れ、乳母もそちらへ行つたとか、今も人が申しましたから、落ちついたので御座りませう。
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詮索ずきさうな顏をした若い方が、口を出す。
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いえ。第一、こんな場合は、騷ぐといけません。騷ぎにつけこんで、惡い魂《タマ》や、靈《モノ》が、うよ/\とつめかけて來るもので御座ります。この御館《ミタチ》も、古いおところだけに、心得のある長老《オトナ》の一人や、二人は、難波へも下らずに、留守に居るので御座りませう。
もうよい/\。では戻らう。
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十
をとめの閨戸《ネヤド》をおとなふ風《フウ》は、何も、珍しげのない國中の爲來《シキタ》りであつた。だが其にも、曾てはさうした風の、一切行はれて居なかつたことを、主張する村々があつた。何時のほどにか、さうした村が、他村の、別々に
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