の町尻に來て居ることに、氣がついた。
[#ここから1字下げ]
これは/\。まだこゝに、殘つてゐたぞ。
[#ここで字下げ終わり]
珍しい發見をしたやうに、彼は馬から身を飜《カヘ》しておりた。二人の資人はすぐ、馳け寄つて手綱を控へた。
家持は、門と門との間に、細かい柵をし圍らし、目隱しに枳殼《カラタチバナ》の叢生《ヤブ》を作つた家の外構への一個處に、まだ石城《シキ》が可なり廣く、人丈にあまる程に築いてあるそばに、近寄つて行つた。
[#ここから1字下げ]
荒れては居るが、こゝは横佩墻内《ヨコハキカキツ》だ。
[#ここで字下げ終わり]
さう言つて、暫らく息を詰めるやうにして、石垣の荒い面を見入つて居た。
[#ここから1字下げ]
さうに御座ります。此|石城《シキ》からしてついた名の、横佩墻内だと申しますとかで、せめて一ところだけは、と強ひてとり毀たないとか申します。何分、帥《ソツ》の殿のお都入りまでは何としても、此儘で置くので御座りませう。さやうに、人が申し聞けました。はい。
[#ここで字下げ終わり]
何時の間にか、三條三坊まで來てしまつてゐたのである。
おれは、こんな處へ來ようと言ふ考へはなか
前へ
次へ
全160ページ中78ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
釈 迢空 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング