4水準2−3−4]所《カブシヨ》の古記録「東歌《アヅマウタ》」の中に見た一首がふと、此時、彼の言ひたい氣持ちを、代作して居てくれてゐたやうに、思ひ出された。
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さうだ。「おもしろき野《ヌ》をば 勿《ナ》燒きそ」だ。此でよいのだ。
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けゞんな顏を仰《アフム》けてゐる伴人《トモビト》らに、柔和な笑顏を向けた。
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さうは思はぬか。立ち朽りになつた家の間に、どし/″\新しい屋敷が出來て行く。
都は何時までも、家は建て詰まぬが、其でもどちらかと謂へば、減るよりも殖えて行つてゐる。此邊は以前、今頃になると、蛙めの、あやまりたい程鳴く田の原が、續いてたもんだ。
仰るとほりで御座ります。春は蛙、夏はくちなは、秋は蝗まろ。此邊はとても、歩けたところでは御座りませんでした。
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今一人が言ふ。
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建つ家もたつ家も、この立派さは、まあどうで御座りませう。其に、どれも此も、此頃急にはやり出した築土垣《ツキヒヂガキ》を築《キヅ》きまはしまして。何やら、以前とはすつかり變つた處に、參つた氣が致します。
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