は正體もなく寢た。身狹までが、姫の起き明す燈の明りを避けて、隅の物陰に、深い鼾を立てはじめた。
郎女は、斷《キ》れては織り、織つては斷れ、手がだるくなつてもまだ梭《ヒ》を放さうともせぬ。
だが、此頃の姫の心は、滿ち足らうて居た。あれほど、夜々《ヨルヽヽ》見て居た俤人《オモカゲビト》の姿も見ずに、安らかな氣持ちが續いてゐるのである。
「此機を織りあげて、はやうあの素肌のお身を、掩うてあげたい。」
其ばかり考へて居る。世の中になし遂げられぬものゝあると言ふことを、あて人は知らぬのであつた。
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ちよう ちよう はた はた。
はた はた ちよう……。
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筬を流れるやうに、手もとにくり寄せられる絲が、動かなくなつた。引いても扱《コ》いても通らぬ。筬の齒が幾枚も毀《コボ》れて、絲筋の上にかゝつて居るのが見える。
郎女は、溜め息をついた。乳母に問うても、知るまい。女たちを起して聞いた所で、滑らかに動かすことはえすまい。
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どうしたら、よいのだらう。
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姫ははじめて、顏へ偏《カタヨ》つてかゝつて來る髮のうるさゝ
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