びて寂しく、目にうつる。

長い渚を歩いて行く。郎女の髮は、左から右から吹く風に、あちらへ靡き、こちらへ亂れする。浪はたゞ、足もとに寄せてゐる。渚と思うたのは、海の中道《ナカミチ》である。浪は兩方から打つて來る。どこまでも/\、海の道は續く。郎女の足は、砂を踏んでゐる。その砂すらも、段々水に掩はれて來る。砂を踏む。踏むと思うて居る中に、ふと其が、白々とした照る玉だ、と氣がつく。姫は身を屈《コヾ》めて、白玉を拾ふ。拾うても/\、玉は皆、掌《タナソコ》に置くと、粉の如く碎けて、吹きつける風に散る。其でも、玉を拾ひ續ける。玉は水隱《ミガク》れて、見えぬ樣になつて行く。姫は悲しさに、もろ手を以て掬《スク》はうとする。掬《ムス》んでも/\、水のやうに手股《タナマタ》から流れ去る白玉――。玉が再、砂の上につぶ/\竝んで見える。忙《アワタヾ》しく拾はうとする姫の俯《ウツム》いた背を越して、流れる浪が泡立つてとほる。
姫は――やつと、白玉を取りあげた。輝く、大きな玉。さう思うた刹那、郎女の身は、大浪にうち仆される。浪に漂ふ身……衣もなく、裳《モ》もない。抱き持つた等身の白玉と一つに、水の上に照り輝く現
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