た。それはゆうべ判ったのだ――一種の示顕《じげん》を蒙ったように突然に判ったのだ。なんという単純なことだ――なんという怖ろしい単純だ!
世の中にはおれたちに聞こえない物音がある。音階の両端には、人間の耳という不完全な機械の鼓膜《こまく》には震動を感じられないような音符がある。その音はあまりに高いか、またはあまりに低いかであるのだ。おれは木の頂上に鶫《つぐみ》の群れがいっぱいに止まっているのを見ていると――一本の木ではない、たくさんの木に止まっているのだ――そうして、みな声を張りあげて歌っているのだ。すると、不意に――一瞬間に――まったく同じ一刹那に――その鳥の群れはみな空中へ舞いあがって飛び去ってしまった。それはなぜだろう。どの木も重なって邪魔になって、鳥にはおたがい同士が見えないはずだ。また、どこにもその指揮者――みんなから見えるような指揮者の棲んでいる場所がないのだ。してみれば、そこには何か普通のがちゃがちゃいう以上に、もっと高い、もっと鋭い、通知か指揮かの合図がなければならない。ただ、おれの耳にきこえないだけのことだ。
おれはまた、それと同じようにたくさんの鳥が一度に飛び去る
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