烽フで、その言語、思想、事物の關係を論じた無底邊三角形(同書第一章)は有名である。即ち、事物と思想、思想と言語とは、それぞれ直接の關係を持つてゐるが、事物と言語とは間接の關係しか持つてゐない、と言ふのである。而して、此の三角形は多くの場合に底邊を持つてゐないことゝなる。即ちシムボルとしての言語と事物とを結合する線が缺けてゐることが多いのである。我々の日常用ゐる言葉の上に多くの錯誤が生じて來るのは、こゝに原因する。何故ならば、我々はシムボルと事物との間に直接の關係があるかのやうに思ひ込んでゐるのみならず、さう考へることが言葉を使用する時に便利であるとさへ思つてゐるからである。若し、我々が此の三角形に於いて、その底邊が缺けてゐるといふことを反省するならば、言語上の誤解が生ぜずにすむだらうと言ふのである。尚ほ此は本居宣長の「こと、こころ、ことば」の三角關係の學説及び富士谷御杖の學説と比較して垣内松三氏によつて研究されてゐる。
[#「書物、思想、言語(象徴)」を説明した無底辺三角形の図(fig18361_01.png)入る]
* 石橋幸太郎氏による此の書の第三版の完譯が昭和十一年に刊行せら
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