んでしょう」
 とおかあさんは説き明かしました。
 とたちまち霧は消えてしまって、空は紺青《こんじょう》に澄《す》みわたって、その中を雲雀がかけていました。遠い遠い所に木のしげった島が見えます。白砂《しらすな》の上を人々が手を取り合って行きかいしております。祭壇《さいだん》から火の立ち登る柱廊下《ちゅうろうか》の上にそびえた黄金の円屋根《まるやね》に夕ぐれの光が反映《うつ》って、島の空高く薔薇色と藍緑色とのにじがかかっていました。
「あれはなんですか、ママ」
 おかあさんはなんと答えていいか知りませんでした。
「あれが鳩の歌った天国ですか、いったい天国とはなんでしょう、ママ」
「そこはね、みんながおたがいに友だちになって、悲しい事も争闘《あらそい》もしない所です」
「私はそこに行きたいなあ」
 と子どもが言いました。
「私もですよ」
 と憂《う》さ辛《つら》さに浮《う》き世《よ》をはかなんださびしいおかあさんも言いました。



底本:「一房の葡萄」角川文庫、角川書店
   1952(昭和27)年3月10日初版発行
   1967(昭和42)年5月30日39版発行
   1987(昭和
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