さい爺だろう」と、マクシーモフがまた修道院のほうへ引っ返して駆け出した時、ミウーソフは口に出して言った。
「フォン・ゾンに似てらあ」とだしぬけにフョードルが言った。
「あなたの知ってるのはそんなことぐらいですよ。……どうしてあの男がフォン・ゾンに似てるんです! あなたは自分でフォン・ゾンを見たことがあるのですか」
「写真で見ましたよ。別に顔つきが似ておるわけじゃないが、どことなしにそんなところがあるんですよ。正真正銘フォン・ゾンの生き写しだ。わしはいつでも顔つきを見ただけでそういうことがわかるんでしてね」
「おおきにね。あなたはその道の通人だから。ただね、フョードル・パーヴロヴィッチ、あなたがたった今、御自分でおっしゃったとおり、僕たちは行儀に気をつけるっていう約束をしたんですよ、ね、いいですか。どうか、気をつけてくださいよ。あなたが道化たまねを始めなさるようなら、僕はここであなたと同列に置かれる気は、さらさらないのですからね……どうです、なんという人でしょうね」と彼は僧のほうへふり向いた。「僕はこの人といっしょにきちんとした人を訪問するのが、心配でたまらないのですよ」
血の気のない
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