たくしは行ってまいりましたよ、行ってまいりましたよ、わたくしはもう行ってまいりましたんで……Un chevalier parfait !(立派な騎士です)」と地主は宙で指をぱちりと鳴らした。
「Chevalie って誰のことです?」
「長老のことですよ。すばらしい長老ですて。実にすばらしい……。この修道院のほまれですよ。ゾシマ長老。あのかたはまことに……」
しかし、そのまとまりのないことばを、ちょうど一行に追いついた、一人の僧がさえぎった。それは頭巾をかぶった、背のあまり高くない、恐ろしく顔の青ざめて痩せさらばえた僧であった。フョードル・パーヴロヴィッチとミウーソフとは立ち止まった。僧はほどんど顔が帯にくっつくくらい丁寧な会釈をしてから、こう言った。
「皆様、庵室のほうの御用が済みましたら、修道院長が皆様にお食事を差し上げたいと申しておられます。時刻は正一時で、それより遅くなりませぬように。あなたもどうぞ」と彼はマクシーモフの方へふり返ってつけ加えた。
「それはぜひお受けいたしますよ!」と、フョードル・パーヴロヴィッチはその招待にひどく恐悦して叫んだ。「ぜひとも。それになんですよ、わ
前へ
次へ
全844ページ中91ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中山 省三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング