遷延していたので、彼は親しく修道院長に会って、なんとか事件を円満に解決するわけにはいかないものか、ひとつ談合してみたいという口実のもとに、それを利用しようと考えたのである。こういう有益な意図を持った来訪者は、修道院でも単なる好事家より一倍と注意を払って遇するに違いない。こうして事情を総合してみると、近ごろ病気のために普通の訪問者さえ拒絶して、ほとんど全く庵室を出なくなった長老に対しても、修道院の内部からなんとか都合のいい口添えをしてくれるかもしれなかった。結局、長老は承諾して、日取りまで決められた。『いったい誰がわしをあの人たちの仲へ割りこませたのだろう?』と、ただ一言、アリョーシャに向かって微笑みを含みながら言った。会合の話を聞いて、アリョーシャはひどく当惑した。もしこれらの相争える不和な人たちの中で、誰かこの会合をまじめに見る人があるとすれば、それはまさしく兄ドミトリイだけである。爾余《じよ》の連中に至っては、ただ軽薄な、長老にとって侮辱的な目的のためにやって来るのにすぎない――とアリョーシャは、こんな風に考えたのだ。兄イワンとミウーソフは無作法きわまる好奇心からやって来るのだろう
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