は親身になって孤児《みなしご》のめんどうを見ることにした。中でも、弟のアレクセイをことさらに可愛《かわい》がったので、アレクセイは長いあいだその家の家族として大きくなったものといえる。私は最初からこのことに注目されんことを読者にお願いする。もし若者たちが養育と学問の点で、生涯を通じて、誰かに負うところがあったとすれば、それはすなわち、この、まれに見る高潔な、人情のあついエフィム・ペトローヴィッチに対してであった。彼は将軍夫人から残された二千ルーブルの金を、子供らのためにそっくり保管してきたので、二人が丁年に達しようとするころには利子が積もり積もってそれぞれ二倍からになっていた。彼は自分の金で二人を養育したのであるが、いうまでもなく、それは一人あたり千ルーブルよりはずっと多くかかっていた。彼らの青少年時代の細々した話にはいることはしばらく見合わせて、私はただ重要な点だけを述べておくことにしよう。それにしても、兄のイワンについては、彼が長ずるに従ってけっして臆病なわけではないが、なんとなく気むずかしい、引っこみ思案の少年になって、十くらいのころから自分たちの兄弟はやはり他人の家で、他人のお
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