るためなんだ。もっとも、あの爺さんが額でこつんとやったのは、予言でもなんでもありゃしないよ。ところが、世間では、いやあれは象徴《シンボル》だの諷刺《アレゴリイ》だのと、くだらないことをいうのさ! そして犯罪を未然に察したとか、犯人の目星をつけたとか言いふらすのだ。宗教的奇人《ユロージウイ》なんてものはみんなそうなんだよ。居酒屋に向かって十字を切って、お寺へ石を投げつけるってやつさ、君の長老もそのたぐいで、正直なものは棒で追っぱらいながら、人殺しの足もとにはいつくばるってね」
「どんな犯罪なの? 人殺しって誰のことだい?」アリョーシャは釘づけにされたように棒立ちになった。ラキーチンも立ち止まった。
「どんなって? いやに白ばくれるね? 君がもうこのことを考えてるってこたあ、賭《かけ》をしてもいいよ。しかし、こいつぁあちょっとおもしろい問題だ。ねえアリョーシャ、君はいつも二股膏薬《ふたまたごうやく》だけれど、とにかく本当のことを言うから、聞いてみるんだが、いったい君はこのことを考えてたのか、それとも考えていなかったのかい?」
「考えてたよ」とアリョーシャは低い声で答えた。で、ラキーチンのほ
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