とも、彼は生まれつき癇癪《かんしゃく》持ちで、『常軌を逸した突発的な性情』を持っていた。これは当市の判事セミヨン・イワーノヴィッチ・カチャリニコフが、ある集会の席で彼を批評したことばである、彼はフロックコートのボタンをきちんとかけて、黒の手袋をはめ、絹帽子《シルクハット》を手に持って、申し分のない瀟洒《しょうしゃ》な服装ではいって来た。つい最近退職したばかりの軍人のよくするように、口髭《くちひげ》だけをたくわえて、頤鬚《あごひげ》は今のところきれいに剃《そ》り落としている。暗色の髪は短く刈りこんで、顳※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]《こめかみ》のところだけちょっと前へ梳《と》き出してあった。彼は軍隊式に活発な大またで歩いて来た。一瞬間、閾《しきい》の上に立ち止まって、ひとわたり一同を見回すと、彼はそれがこの席の主人だと見てとって、いきなり長老のほうへつかつかと歩み寄った。彼は長老に向かって深く腰をかがめて祝福を乞うた。長老は立ち上がって彼に祝福を与えた。ドミトリイ・フョードロヴィッチはうやうやしくその手を接吻すると、恐ろしく興奮した、ほとんどいらいらしたような調子で口をきった。
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