その口辺に漂っていた。アリョーシャは激しく胸をおどらせながら始終の様子に注意していた。この会話のすべてが極度に彼を興奮させたのである。彼がふとラキーチンのほうを見やると、この男は依然として戸のそばにじっとたたずんだまま、眼こそ伏せてはいるが、注意深く耳を澄ましながらすべてを観察していた。しかしその頬に映《は》えている紅潮によって、彼もアリョーシャに劣らず興奮していることが察せられた。彼が興奮している理由をアリョーシャはよく知っていた。
「失礼ですが、皆さん、ひとつちょっとした逸話をお話しいたしましょう」突然ミウーソフが格別もったいぶった様子で、意味深長に語りだした。「あれは十二月革命のすぐ後のことですから、もう幾年か前の話ですが、ある時、僕はパリである一人の非常に権勢のある政治家のところへ、私交上の訪問をしましたところ、そこできわめて興味ある人物に出会いました。この人物は普通の探偵というより、大ぜいの政治探偵の部隊を指揮している人で、ですから、やはり一種の権勢家なんですね。この人物と、ふとしたきっかけから、僕は好奇心にかられて、話を始めたのです。ところで、この人は別に知己として面会に来
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