で、正常な状態に導くどころか、幾分でも我慢のできる状態に導くことすらできないのであります。と言いますのは、そもそもその根本に虚為が横たわっているからであります。たとえば裁判というような問題において国家と教会とが妥協することは、純粋な本質から言って不可能であります。僕が弁駁《べんばく》を試みた僧侶のかたは、教会が国家の中に確然たる一定の地歩を占めていると断定しておられますが、僕は反対に、教会こそそれ自身の中に国家全体を包含すべきであって、国家の中に確かな一隅を占めるべきものではない。たとえ今は、何かの理由でそれが不可能であっても、その根本においては、キリスト教社会の今後の発展に対する直接かつ重要な目的とならねばならぬ、とこう論駁したのであります」
「全然公正なる御意見です」と、無口で博学な僧パイーシイ神父が、強い神経質な声で口をはさんだ。
「純然たる法王集権論《ウルトラモンタンストオ》ですよ!」と、じれったそうにかわるがわる両方の足を置き換えながら、ミウーソフが叫んだ。
「なんですと! それに第一、ロシアには山などありませんよ!」と司書の僧ヨシフ師が叫んだ。そしてさらに長老のほうを向きな
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