ゥるい背広を
かるい背広を身につけて、
今宵《こよひ》またゆく都川、
恋か、ねたみか、吊橋の
瓦斯の薄黄《うすぎ》が気にかかる。
[#地から3字上げ]四十三年七月
薄あかり
銀《ぎん》の時計のつめたさは
薄らあかりの※[#ローマ数字7、1−13−27]《しち》の字に、
君がこころのつめたさは
河岸《かし》の月夜の薄あかり。
薄いなさけにひかされて、けふもほのかに来は来たが、
心あがりのした男、何のわたしに縁があろ。
空の光のさみしさは
薄らあかりのねこやなぎ、
歩むこころのさみしさは
雪と瓦斯との薄あかり。
思ひ切らうか、切るまいか、そつと帰ろか、何とせう。
いつそあの日のくちつけを後《のち》のゆかりに別れよか。
水のにほひのゆかしさは
薄らあかりの鴨の羽、
三味のねじめのゆかしさは
遠い杵屋の薄あかり。
かるい背広を身につけてじつと凝視《みつ》むる薄あかり。
薄い涙につまされて、けふもほのかに来は来たが。
銀の時計のつめたさは
薄らあかりの※[#ローマ数字7、1−13−27]の字に、
君がこころのつめたさは
青い月夜の薄あかり。
恋か、りんきか、知らねども、ほ
前へ
次へ
全96ページ中69ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
北原 白秋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング