tに挑《いど》まれて、
戯《おど》けつくした身のひねり、
突拍子《とつぺし》もないひと躍り……

  Ichi kake, Ni kake, San kake te,
  Shi kake te, Go kake te, Hasyo kake te,
  Kawai Okata wo ……

ふいと消えたる変化《へんげ》もの、
白粉《おしろい》の濃《こ》い、手の白い、素足《すあし》の白い、
唇《くちびる》の赤《あか》い沈黙《ちんもく》……

雨はふる……雨はふる……
陰気な黴くさい雨……長い雨……日ぐらしの雨……
気まぐれな不摂生《ふせつせい》のあとの痛《いた》ましい寂寥《さびしみ》、
幻影《イリユージヨン》の消え失せた雰囲気《ふんゐき》の暗《くら》い緑に、
むづ痒《か》ゆいやうな、気の抜けた、さみしい、弱い、せうことなしの
雨はふる……雨はふる……本能と神経の黄昏時《たそがれどき》。

しとしと[#「しとしと」に傍点]と、しとしと[#「しとしと」に傍点]と、
絶え間なく雨はふる、ふりそそぐ、葉から葉へ、しと[#「しと」に傍点]と滴《したた》る。
深緑《しんりよく》の闇《くら》い夜《よ
前へ 次へ
全96ページ中46ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
北原 白秋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング