Gれた黄花※[#「くさかんむり/(束+束)」、66−1]肉《きのはなにんにく》を眺める。
[#ここから横組み]“*Ogamadashi, Mauske”[#ここで横組み終わり]自慢らしい手つきで
喞《くは》えたパイプの雁首《がんくび》をぽんとはたく。

隣人は見え坊だ、そりばつてん、
どうかすると吝嗇漢《しみつたれ》だ、
世界苦《せかいく》の気欝《ふさぎ》から、
馬鈴薯《じやがいも》を食《た》べすぎた食傷《もたれ》から。

隣人は女房を恐れる、長崎うまれの
肥満女《ふとつちよ》の息の臭い、馬鹿力のある、
それでよく小娘のやうにかぢりつく、
牛肉《ビイフ》と昼寝の好きな飲酒家《のんだくれ》。

隣人は日に一度黒い蒸汽をながめる、
その悲しい面《かほ》に※[#「さんずい+自」、第3水準1−86−66]芙藍《さふらん》のやうな
黄いろい日が光り、涙がながれる。
さうして悄然《しほしほ》と御燈明《みあかし》をあげにゆく。

隣人の宣教師、混血児《あひのこ》のベンさん
気まぐれな禿頭、
青い眼鏡をかけては街《まち》を歩行《ある》き、
日曜の日には御説教。

[#ここから横組み]“Changhan
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