、じんばしや》を
梧桐《あをぎり》のかげにひき入《い》れたまま、
しづかに読《よ》み耽《ふけ》る……
こころもち疲《つか》れた馬《うま》の呼吸《こきふ》……
短《みじか》く刈《か》つた栗毛《くりげ》の光沢《つや》から沁《し》み出《で》る
臭《にほひ》の奇異《ふしぎ》な汗《あせ》ばみ、その上《うへ》にさしかくる
新聞紙《しんぶんし》の新《あたら》しい触感《しよくかん》、
わか葉《ば》の薄《うす》い緑《みどり》の反射《はんしや》。
新《あたら》しい客《きやく》を待《ま》つ間《あひだ》、
やすらかな五|分時《ふんじ》が過《す》ぎゆく……
[#地から3字上げ]四十三年六月
畜生
やはらかにかなしきは畜生の
こころなれ。
赤き日はアカシヤのわか葉にけぶり、
※[#「くさかんむり/(束+束)」、63−8]肉《にんにく》の黄なる花ちらちらと噎《むせ》ぶとき
怖々《おづおづ》と投げいだし、眠りたる霊《たましひ》の
人間の五官にもわきがたきいと深きかなしみ……
そのゆめはこころもち汗ばみて
傷《きず》つきし銀毛《ぎんまう》の耳に
痛《いた》き花粉は沁《し》み、
やるせなき肉体の憂欝《いううつ
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