ニ夏との二声楽《ヂユエツト》、……緑《みどり》と金《きん》……
[#地から3字上げ]四十三年五月
五月
新しい烏竜茶《ウーロンちや》と日光、
渋味もつた紅《あか》さ、
湧きたつ吐息《といき》……
さうして見よ、
牛乳にまみれた喫茶店《きつさてん》の猫を、
その猫が悩ましい白い毛をすりつける
女の膝の弾力《だんりよく》。
夏《なつ》が来《き》た、
静《しづ》かな五|月《ぐわつ》の昼《ひる》、湯沸《サモワル》からのぼる湯気《ゆげ》が、
紅茶《こうちや》のしめりが、
爽《さわや》かな夏帽子《なつばうし》の麦稈《むぎわら》に沁《し》み込《こ》み、
うつむく横顔《よこがほ》の薄《うす》い白粉《おしろい》を汗《あせ》ばませ、
而《さう》してわかい男《をとこ》の強《つよ》い体臭《にほひ》をいらだたす。
「苦《くる》しい刹那《せつな》」のごとく、黄《き》ばみかけて
痛《いた》いほど光《ひか》る白《しろ》い前掛《まへかけ》の女《をんな》よ。
「烏竜茶《ウーロンちや》をもう一|杯《ぱい》。」
[#地から3字上げ]四十三年五月
銀座花壇
赤《あか》い花《はな》、小《ちひ》さい花《はな》
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