から横組み]“PAN”[#ここで横組み終わり]とわが「屋上庭園」の友にささぐ
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東京夜曲
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公園の薄暮
ほの青き銀色《ぎんいろ》の空気《くうき》に、
そことなく噴水《ふきあげ》の水はしたたり、
薄明《うすあかり》ややしばしさまかえぬほど、
ふくらなる羽毛頸巻《ボア》のいろなやましく女ゆきかふ。
つつましき枯草《かれくさ》の湿《しめ》るにほひよ……
円形《まろがた》に、あるは楕円《だゑん》に、
劃《かぎ》られし園《その》の配置《はいち》の黄《き》にほめき、靄に三つ四つ
色|淡《うす》き紫の弧燈《アアクとう》したしげに光うるほふ。
春はなほ見えねども、園《その》のこころに
いと甘き沈丁《ぢんてう》の苦《にが》き莟《つぼみ》の
刺《さ》すがごと沁《し》みきたり、瓦斯《ガス》の薄黄《うすぎ》は
身を投げし霊《たましひ》のゆめのごと水のほとりに。
暮れかぬる電車《でんしや》のきしり……
凋《しを》れたる調和《てうわ》にぞ修道女《しゆうだうめ》の一人《ひとり》消え
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