*緑臺、葡萄牙語の轉化か。


 櫨の實


冬の日が灰いろの市街を染めた、――
めづらしい黄《きい》ろさで、あかるく。
濁川に、向ふ河岸《かし》の櫨《はじ》の實に、
そのかげの朱印を押した材木の置場に。

枯れ枯れになつた葦《あし》の葉のささやき、…………
潮の引く方へおとなしく家鴨《あひる》がすべり、
鰻を生けた魚籠《うけ》のにほひも澱《とろ》む。

古風な中二階の危ふさ、
欄干《てすり》のそばに赤い果《み》の萬年青《おもと》を置いて、
柳河のしをらしい縫針《ぬひはり》の娘が
物指《ものさし》を頬にあてて考へてる。

何處《どこ》かで三味線の懶《ものう》い調子、――
疲れてゆく靜かな思ひ出の街《まち》、
その裏《うら》の寂しい生活《くらし》をさしのぞくやうに
「出《いで》の橋」の朽ちかかつた橋桁《はしげた》のうへから
YORANBANSHO [#「YORANBANSHO」に「*」の著者註]の花嫁が耻かしさうに眺めてゆく。

久し振りに雪のふりさうな空合《そらあひ》から
氣まぐれな夕日がまたあかるくてりかへし、
櫨《はじ》の實の卵いろに光る梢、
をりをり黒い鴉が留まっては消えてゆく。
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