にさはるがごとく。
夏はまた唖《おふし》の水馬《すいま》、
水面《みづのも》にただ彈《はぢ》くのみ。
誰か來て、するどきナイフ
ぐさと實を突《つ》き刺せよかし。…………
無花果は、ああ、わがゆめは、
今日《けふ》もなほ赤くふくるる。
水銀の玉
初冬の朝間《あさま》、鏡をそつと反《かへ》して、
緑ふくその上に水銀の玉を載すれば
ちらちらとその玉のちろろめく、
指さきに觸るれば
ちらちらとちぎれて
せんなしや、ちろろめく、
捉へがたきその玉よ、小《ちい》さき水銀の玉。
わかき日の、わかき日の、ちろろめく水銀の玉。
接吻の後
怖ろしきその女、
なつかしきその夜。
翌《あけ》の日は西よりのぼり、
恐怖《おそれ》と光にロンドン咲く。
血のごとく赤きロンドン。
われはただ路傍《みちばた》に俯し、
青ざめてじつと凝視《みつ》めつ。
血のごとく赤きロンドン。
ロンドンに
彈《は》ねかへる甲蟲《かぶとむし》、
――ある事を知れるごとくに。
はねかへる甲蟲、
われはただロンドンに
言葉なく顫へて恐る。
――わが生の第一の接吻《キス》。
たんぽぽ
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