臘月《らふげつ》の十九日《じふくにち》、
丑満《うしみつ》の夜《よ》の館《やかた》。
龕《みづし》めく唐銅《からかね》の櫃《ひつ》の上《うへ》
燭《しよく》青《あを》うまじろがずひとつ照る。
時になほ、朦朧《もうろう》と黒衣《こくえ》して
天鵝絨《びろうど》のものにぶき床《ゆか》に立ち、
わなわなと壁|熟視《みつ》め、
ひとり、また戦慄《せんりつ》す。
掌《て》ひらけば汗《あせ》はあな生《なま》なまと
さながらに人間《にんげん》の血のにほひ。
[#地付き]三十九年十二月
失くしつる
失《な》くしつる。
さはあるべくもおもはれね。
またある日には、
探《さが》しなば、なほあるごともおもはるる。
色青き真珠《しんじゆ》のたまよ。
[#地付き]四十一年七月
[#改ページ]
装幀………………………………………………………………石井柏亭
「エツキスリプリス」及「幼児磔殺」………………………石井柏亭
挿画『澆季』……………………………………………………石井柏亭
挿画『真昼』……………………………………………………山本 鼎
私信『四十一年七月廿一日便』………………………………太田正雄
挿画『硝子吹く家』………………………………………………石井柏亭
扉絵及欄画十葉………………………………………………石井柏亭
彫版………………………………………………………………山本 鼎
底本:「白秋全集 1」岩波書店
1984(昭和59)年12月5日発行
底本の親本:「邪宗門」易風社
1909(明治42)年3月15日発行
入力:kompass
校正:今井忠夫
2003年11月24日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全13ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
北原 白秋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング