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一、本集に収めたる六章約百二十篇の詩は明治三十九年の四月より同四十一年の臘月に至る、即最近三年間の所作にして、集中の大半は殆昨一年の努力に成る。就中『古酒』中の「よひやみ」「柑子」「晩秋」の類最も旧くして『魔睡』中に載せたる「室内庭園」「曇日」の二篇はその最も新しきものなり。
一、予が真に詩を知り初めたるは僅に此の二三年の事に属す。されば此の間の前後に作られたる種々の傾向の詩は皆予が初期の試作たるを免れず。従て本集の編纂に際しては特に自信ある代表作物のみを精査し、少年時の長篇五六及その後の新旧作七十篇の余は遺憾なく割愛したり。この外百篇に近き『断章』と『思出』五十篇の著作あれども、紙数の制限上、これらは他の新しき機会を待ちて出版するの已むなきに到れり。
一、予が象徴詩は情緒の諧楽と感覚の印象とを主とす。故に、凡て予が拠る所は僅かなれども生れて享け得たる自己の感覚と刺戟苦き神経の悦楽とにして、かの初めより情感の妙なる震慄を無みし只冷かなる思想の概念を求めて強ひて詩を作為するが如きを嫌忌す。されば予が詩を読まむとする人にして、之に理知の闡
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