tもぞする。……ああ見まもれど
おもむろに悩《なや》みまじろふ色の陰影《かげ》
それともわかね……熱病《ねつびやう》の闇のをののき……
Hachisch《ハシツシユ》 か、酢《す》か、茴香酒《アブサン》か、くるほしく
溺《おぼ》れしあとの日の疲労《つかれ》……縺《もつ》れちらぼふ
Wagner《ワグネル》 の恋慕《れんぼ》の楽《がく》の音《ね》のゆらぎ
耳かたぶけてうち透《す》かし、在《あ》りは在《あ》れども。
それらみな素足《すあし》のもとのくらがりに
爛壊《らんゑ》の光|放《はな》つとき、そのかなしみの
腐《くさ》れたる曲《きよく》の緑《みどり》を如何《いか》にせむ。
君を思ふとのたまひしゆめの言葉《ことば》も。
わかき日の赤《あか》きなやみに織りいでし
にほひ、いろ、ゆめ、おぼろかに嗅《か》ぐとなけれど、
ものやはに暮れもかぬれば、わがこころ
天鵝絨《びろうど》深くひきかつぎ、今日《けふ》も涙す。
[#地付き]四十一年十二月
濃霧
濃霧《のうむ》はそそぐ……腐《くさ》れたる大理《だいり》の石の
生《なま》くさく吐息《といき》するかと蒸し暑く、
はた、冷《ひや》やか
前へ
次へ
全122ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
北原 白秋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング