ぢ》よ、なにすとか、
老眼鏡《おいめがね》ここにこそ、座《ざ》はあきぬ、
いざともに祷《いの》らまし、ひとびとよ、
さんた・まりや。さんた・まりや。さんた・まりや。
拝《をろが》めば香炉《かうろ》の火身に燃えて
百合のごとわが霊《たま》のうちふるふ。
あなかしこ、鴿《はと》の子ら羽《は》をあげて
御龕《みづし》なる蝋《らふ》の火をあらためよ。
黒船《くろふね》の笛きこゆいざさらば
ほどもなくパアテルは見えまさむ、
さらにまた他《た》の燭《そく》をたてまつれ。
あなゆかし、ロレンゾか、鐘鳴らし、
まめやかに安息《あんそく》の日を祝《ほ》ぐは、
あな楽し、真白《ましろ》なる羽をそろへ
鴿《はと》のごと歌はまし、わが子らよ。
あはれなほ日は高し、風たちて
棕櫚《しゆろ》の葉のうち戦《そよ》ぎ冷《ひ》ゆるまで、
ほのかなる蝋《らふ》の火に羽をそろへ
鴿《はと》のごと歌はまし、はらからよ。
※[#「舟+虜」、第4水準2−85−82]を抜けよ
はやも聴け、鐘鳴りぬ、わが子らよ、
御堂《みだう》にははや夕《よべ》の歌きこえ、
蝋《らふ》の火もともるらし、※[#「舟+虜」、第4水準2−85−82]《ろ》を抜《ぬ》けよ。
もろもろの美果実《みくだもの》籠《こ》に盛りて、
汝《な》が鴿《はと》ら畑《はた》に下り、しらしらと
帰るらし夕《ゆふ》づつのかげを見よ。
われらいま、空色《そらいろ》の帆《ほ》のやみに
新《あらた》なる大海《おほうみ》の香炉《かうろ》採《と》り
籠《こ》に※[#「火+主」、第3水準1−87−40]《た》きぬ、ひるがへる魚を見よ。
さるほどに、跪き、ひとびとは
目《ま》見《み》青き上人《しやうにん》と夜に祷《いの》り、
捧げます御《み》くるすの香《か》にや酔ふ、
うらうらと咽ぶらし、歌をきけ。
われらまた祖先《みおや》らが血によりて
洗礼《そそ》がれし仮名文《かなぶみ》の御経《みきやう》にぞ
主《しゆう》よ永久《とは》に恵みあれ、われらも、と
鴿《はと》率《ゐ》つつ祷らまし、帆をしぼれ。
はやも聴け、鐘鳴りぬ、わが子らよ、
御堂《みだう》にははや夕《よべ》の歌きこえ、
蝋《らふ》の火もくゆるらし、※[#「舟+虜」、第4水準2−85−82]《ろ》を抜けよ、
汝にささぐ
女子《をみなご》よ、
汝《な》に捧《ささ》ぐ、
ただひとつ。
然《しか》はあれ、汝
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