わが敬愛する人々に
北原白秋
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)復《また》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二人|欷歔《ききよ》した
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#天から3字下げ]大正元年八月二十八日午前三時
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凡てが小生には復《また》と得難い哀《かな》しい省察の時を与へて呉れました。色々と小生の近状を御配慮下さる方々に、ただ小生が健全で如何なる苦痛と羞辱とにも耐え忍び得る程、敬虔な勇気ある状態に自己の霊《たましひ》を温めつゝある事をお伝へしたいと思ひます。
文芸の汚辱者として高品な某文芸新聞の譏笑を受けた事に就きましては、それらの凡てが真実で無かつたにせよ、小生は今更何等の弁解も致し度く御座いません。哀れな芸術の追求者たる小生にただ軽い微笑と小さな寛恕とを彼等一団の文芸記者――詩人文士達にお送りする丈の光栄を有しさへすれば凡てが無事なやうに思はれます。
小生は何事も有の儘に申上ます。或る人――の告訴に依り、身を斬られるほど耻かしい奸通被告事件の一方の被告として、某分署長及某主任検事の再三
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