かくあァがって』
『円天井《まるてんじょう》のすすはきじゃ』
『はァやくかえってちょうだいよう』
『あい、あい。ちょっくら、いますぐだ』
[#改ページ]

 すっとんきょうな南京《なんきん》さん

すっとんきょうな南京《なんきん》さんがお三《さん》かたござった。
それは皆さまとくより御承知だ。
きゃっきゃさわいで猟《かり》にとでかけた。
しかも、めっそうもない、安息日《あんそくび》にでござる。

永《なが》のいちんち、猟《かり》をしてまわり、
これというもの根っから葉っからみつからない。
一つみつけたは帆《ほ》かけた船よ。
それが追風《おって》にしゅっしゅっとはしった。

「あれは船だ」と一番さきのがいいだした。
「なんの、うそだ」と二番目のがうちけした。
「あれは家《うち》さ」と三番目のがいいのけた。――
「こわれ煙突《えんとつ》までとっついてるじゃないかいな」

永《なが》の一晩《ひとばん》猟《かり》をしてまわり、
これというもの根っから葉っからみつからない。
一つみつけたはおすべり屋のお月さんだ、
それがふかれてつるつるとすべった。

「あれはお月さんだ」と一番さきのがいいだした
前へ 次へ
全62ページ中30ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
北原 白秋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング