りかえってござった。
そこへだれだかぬうとでて、
かっと口あけ、すう、ぱくり。
お家《うち》もおばあさんも一切空。
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 ロンドン橋

ロンドン橋《ばし》がおちた。
ロンドン橋がおちた。

なんでこんどかけるぞ。
なんでこんどかけるぞ。

銀と金とでかけてみろ。
銀と金とでかけてみろ。

銀も金もぬすまれた。
銀も金もぬすまれた。

鉄と鋼鉄とでかけてみろ。
鉄と鋼鉄とでかけてみろ。

鉄でも鋼鉄でもへしまがる。
鉄でも鋼鉄でもへしまがる。

材木と粘土とでかけてみろ。
材木と粘土とでかけてみろ。

材木、粘土はながされる。
材木、粘土はながされる。

そんなら石でかけ、そりゃ丈夫《じょぶ》だ。
千年万年|大丈夫《だいじょぶ》だ。
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 世界じゅうの海が

世界じゅうの海が一つの海なら、
どんなに大きい海だろな。
世界じゅうの木という木が一つの木ならば、
どんなに大きな木であろな。
世界じゅうの斧《おの》が一つの斧なら、
どんなに大きな斧だろな。
世界じゅうの人たちがひとりの人なら、
どんなに大きな人だろな。
大きなその人がおおきな斧をとって、
大きな木をきり、
大きなその海にどしんとたおしたら、
それこそ、どんなにどんなに大きい音だろな。
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 空はじめじめ

空はじめじめ、
雨もよい、
ちっちゃなおじいさんにでおうたら、
身ぐるみ革《かわ》きて、
あごに無縁帽《シャッポ》つんだして、
「おさむう、おさむう、こんにちは」

空はじめじめ、
おわかれと、
よぼよぼなかまが手をにぎり、
身ぐるみ革きて、
あごに無縁帽《シャッポ》つんだして、
「さよなら、さよなら、またいつか」
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 アアサア王

アアサア王の御治世《ごじせい》じゃ、
アアサア王はよいかたで、
挽割麦《ひきわり》三斤《さんぎん》ぬゥすんで、
袋形《ふくろなり》のプッジングをこさえよか。

いよいよ王さまのお手製で、
それには山もり乾《ほし》ぶどう、
拇指《おやゆび》二つよりかまだふとい
脂肉《あぶらにく》を二塊《ふたきれ》どしこんだ。

王さまとおきさきとがまずめして、
つぎに大臣たちがおしょうばん、
そしてその夜のおあまりは、
翌朝《よくあさ》おきさきが油揚《あぶらあ》げ。
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 がぶがぶ、むしゃむしゃ

どうしたことだえ、このおば
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