さま》桃色《ももいろ》。
誰《だれ》が云《い》つた。
海女《あま》が云《い》うた。
海女《あま》の口《くち》ひきさけ。(尾張)
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それから、
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大事《だいじ》なお月《つき》さま、
雲《くも》めがかくす。
とても隠《かく》すなら、
金屏風《きんびやうぶ》でかくせ。(東京)
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といふのがありませう。ほんとに金屏風でなくては、あの若い小母さまには似合はないでせうね。いかにも昔のお江戸の子供が謡つたやうでせう。気象《きしやう》が大きくておほまかで、張《はり》があつて、派出《はで》で。
「兎《うさぎ》うさぎ」といふのも御存じでせうね。
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兎《うさぎ》。うさぎ。
何《なに》見《み》て跳《は》ねる。
十五夜《じふごや》お月《つき》さま
見《み》て跳《は》ねる。ピヨン/\。
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ほんとに、お月夜の兎のよろこびと云つたらありません。両耳を立てて、草の香の深い中から、ピヨン/\と跳ねて飛んで出る、あの白い綿のやうな兎さんもかはいいものです。それにしても、あのまアるいお月さまの中
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