して好い。
初句は旧訓タヲヤメノ。拾穂抄タハレメノ。僻案抄ミヤヒメノ。考タワヤメノ。古義ヲトメノ等の訓がある。古鈔本中|元暦《げんりゃく》校本に朱書で或ウネメノとあるに従って訓んだが、なおオホヤメノ(神)タオヤメノ(文)の訓もあるから、旧訓或は考の訓によって味うことも出来る。つまり、「采女《ウネメ》は官女の称なるを義を以てタヲヤメに借りたるなり」(美夫君志)という説を全然否定しないのである。いずれにしても初句の四音ウネメノは稍不安であるから、どうしてもウネメと訓まねばならぬなら、或はウネメラノとラを入れてはどうか知らん。
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引馬野《ひくまぬ》ににほふ榛原《はりはら》いり乱《みだ》り衣《ころも》にほはせ旅《たび》のしるしに 〔巻一・五七〕 長奥麿
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大宝二年(文武)に太上天皇《おおきすめらみこと》(持統)が参河《みかわ》に行幸せられたとき、長忌寸奥麿《ながのいみきおきまろ》(伝不詳)の詠んだ歌である。引馬野は遠江|敷智《ふち》郡(今浜名郡)浜松附近の野で、三方原《みかたがはら》の南寄に曳馬《ひくま》村があるか
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