水《いみず》郡(今は射水・氷見両郡)今の伏木町の西北に聳《そび》ゆる山である。もう一つの反歌は、「渋渓《しぶたに》の埼の荒磯《ありそ》に寄する波いやしくしくに古《いにし》へ思ほゆ」(巻十七・三九八六)というのであるが、この「たまくしげ」の歌は、毫《ごう》も息を張ることなく、ただ感を流露《りゅうろ》せしめたという趣の歌である。「興に依りて之を作る」と左注にあるが、興の儘《まま》に、理窟《りくつ》で運ばずに家持流の語気で運んだのはこの歌をして一層なつかしく感ぜしめる。既に出した、大伴坂上郎女の歌に、「よの常に聞くは苦しき喚子鳥《よぶこどり》声なつかしき時にはなりぬ」(巻八・一四四七)と稍《やや》似て居るが、家持の方が単純で素直である。

           ○

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婦負《めひ》の野《ぬ》の薄《すすき》おし靡《な》べ降《ふ》る雪《ゆき》に宿《やど》借《か》る今日《けふ》し悲《かな》しく思《おもほ》ほ[#「ほ」に「イは」の注記]ゆ 〔巻十七・四〇一六〕 高市黒人
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 これは、高市連黒人《たけちのむらじくろひと》の歌だが、天平十九年に三国真人五百国
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