はそのためであろう。「葦《あし》べゆく鴨の羽交《はがひ》に霜ふりて寒き夕は大和《やまと》しおもほゆ」(巻一・六四)という志貴皇子の御歌に似ている。

           ○

 東歌の選鈔《せんしょう》は大体右の如くであるが、東歌はなお特殊なものは幾つかあり、秀歌という程でなくとも、注意すべきものだから次に記し置くのである。
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さ寝《ぬ》らくはたまの緒《を》ばかり恋ふらくは富士の高嶺《たかね》の鳴沢《なるさは》の如《ごと》 (巻十四・三三五八)
足柄《あしがり》の土肥《とひ》の河内《かふち》に出づる湯の世にもたよらに児ろが言はなくに (同・三三六八)
入間道《いりまぢ》の大家《おほや》が原のいはゐづら引かばぬるぬる吾《わ》にな絶えそね (同・三三七八)
我背子《わがせこ》を何《あ》どかもいはむ武蔵野のうけらが花の時無きものを (同・三三七九)
筑波嶺にかが鳴く鷲《わし》の音《ね》のみをか鳴き渡りなむ逢ふとは無しに (同・三三九〇)
小筑波の嶺《ね》ろに月立《つくた》し逢ひだ夜は多《さはだ》なりぬをまた寝てむかも (同・三三九五)
伊香保ろの傍《そひ》の榛原《はり
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