る小松にまで雪が降って来る、というので、巻向は成程《なるほど》高い山だと感ずる気持がある。「岸《きし》」は前にもあったが、川岸などの岸と同じく、山と平地との境あたりで、なだれになっているのを云うのである。「山かも高き」というような云い方は既に幾度も出て来て、常套《じょうとう》手段の如き感があるが、当時の人々は、いつもすうっとそういう云い方に運ばれて行ったものだろうから、吾々もそのつもりで味う方がいいだろう。「岸の小松にみ雪降り来る」の句を私は好いているが、小松は老松ではないけれども相当に高くとも小松といったこと、次の歌がそれを証している。
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巻向《まきむく》の檜原《ひはら》もいまだ雲《くも》ゐねば子松《こまつ》が末《うれ》ゆ沫雪《あわゆき》流る 〔巻十・二三一四〕 柿本人麿歌集
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巻向の檜林《ひのきばやし》は既に出た泊瀬《はつせ》の檜林のように、広大で且つ有名であった。その檜原に未だ雨雲が掛かっていないに、近くの松の梢《こずえ》にもう雪が降ってくる、という歌で、「うれゆ」の「ゆ」は、「ながる」という流動の動詞
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