の此歌も、「ほどろほどろに」と繰返しているのは、旅人はそう感じて繰返したのであろうから、分量の少い、薄く降るという解釈とは合わぬのである。特に「零り重《し》けば」であるから、単に「薄い雪」をハダレというのでは解釈がつかない。また、「はだれ降りおほひ消《け》なばかも」(同・二三三七)の例も、薄く降るというよりも盛に降る心持である。そこで、ハダレは繊細に柔かに降り積る雪のことで、ホドロホドロニは、そういう柔かい感じの雪が、勢いづいて降るということになりはしないか。ホドロホドロと繰返したのは旅人のこの一首のみで、模倣せられずにしまった。
 この一首は、前にあった旅人の歌同様、線の太い、直線的な歌いぶりであるが、感慨が浮調子《うわちょうし》でなく真面目《まじめ》な歌いぶりである。細かく顫《ふる》う哀韻を聴き得ないのは、憶良《おくら》などの歌もそうだが、この一団の歌人の一つの傾向と看做《みな》し得るであろう。

           ○

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吾背子《わがせこ》と二人《ふたり》見《み》ませば幾許《いくばく》かこの零《ふ》る雪《ゆき》の懽《うれ》しからまし 〔巻八・一六五八〕 
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