また訓も「ナクシカハ」(類・神・温・矢・京)となって居るのがある。注釈書では既に拾穂抄でこれを注意し、代匠記で、官本之作[#レ]者、点云、ナクシカハ。別校本或同[#レ]此。幽斎本之作[#レ]者、点云、ナクシカノ、と注した。そこで近時、「ナクシカハ」の訓に従うようになったが、古今六帖には、「鳴く鹿の」となって居り、又幽斎本では鳴鹿者と書いて、「ナクシカノ」と訓んで、また旧板本は鳴鹿之であるから、「ナクシカノ」という訓も古くからあったことが分かる。もっとも、「鳴鹿之」は巻九巻頭の、「臥鹿之」の「之」に拠《よ》って直したとも想像することも出来るが、兎も角長い期間「鳴く鹿の」として伝わって来ている。今となって見れば、「鳴く鹿は[#「は」に白丸傍点]」の方は、「今夜は[#「は」に白丸傍点]」と続いて、古調に響くから、「鳴く鹿は」の方が原作かも知れないけれども、「鳴く鹿の」としても、充分味うことの出来る歌である。
 なお、一寸《ちょっと》前言した如く、巻九(一六六四)に、雄略天皇御製歌として、「ゆふされば小倉の山に臥す鹿の今夜《こよひ》は鳴かず寐《い》ねにけらしも」という歌が載《の》っていて、二つ
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