人の歌で、春到来の心を詠んでいる。百済野は大和《やまと》北葛城《きたかつらぎ》郡|百済《くだら》村附近の原野である。「萩の古枝」は冬枯れた萩の枝で、相当の高さと繁みになったものであろう。「春待つと居りし」あたりのいい方は、古調のいいところであるが、旧訓スミシ・ウグヒスであったのを、古義では脱字説を唱え、キヰシ・ウグヒスと訓《よ》んだ。併し古い訓(類聚古集・神田本)の、ヲリシウグヒスの方がいい。この歌も、何でもないようであるが、徒《いたず》らに興奮せずに、気品を保たせているのを尊敬すべきである。これも期せずして赤人の歌になったが、選んで来て印をつけると、自然こういう結果になるということは興味あることで、もっと先きの巻に於ける家持の歌の場合と同じである。

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蝦《かはづ》鳴《な》く甘南備河《かむなびがは》にかげ見《み》えて今《いま》か咲《さ》くらむ山吹《やまぶき》の花《はな》 〔巻八・一四三五〕 厚見王
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 厚見王《あつみのおおきみ》の歌一首。厚見王は続紀《しょくき》に、天平勝宝《てんぴょうしょうほう》元年に従五位下
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