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うち靡《なび》く春《はる》来《きた》るらし山《やま》の際《ま》の遠《とほ》き木末《こぬれ》の咲《さ》きゆく見れば 〔巻八・一四二二〕 尾張連
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 尾張連《おわりのむらじ》の歌としてあるが、伝不明である。一首は、山のあいの遠くまで続く木立に、きのうも今日も花が多くなって見える、もう春が来たというので、「咲きゆく」だから、次から次と花が咲いてゆく、時間的経過を含めたものだが、其処に読者を迷わせるところもなく、ゆったりとした迫らない響を感じさせている。そして、春の到来に対する感慨が全体にこもり、特に結句の「見れば」のところに集まっているようである。「木末の咲きゆく」などという簡潔ないいあらわしは、後代には跡を断《た》った。それは、幽玄とか有心《うしん》とか云って、深みを要求していながら、歌人の心の全体が常識的に分化してしまったからである。

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春《はる》の野《ぬ》に菫《すみれ》採《つ》みにと来《こ》し吾《われ》ぞ野《ぬ》をなつかしみ一夜《ひとよ》宿《ね》にける 〔巻八・一四二四〕 山部赤人
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